わが国の貿易収支は、1970年代以降、1973年と1979年の二度の石油危機の時期を除くと、大きな黒字額を計上してきた。
その黒字額のほとんどすべてをアメリカとEC諸国から得ていた。そのため、これらの国々と経済摩擦が生じてきた。
 わが国の貿易構造は、原燃料を輸入し、重化学工業製品を輸出するという加工貿易型となっている。輸出については自動車・電気機器などの工業製品の割合が高く、輸入については1980年代後半までは石油・鉄鉱石などの原燃料の割合が高かった。

 1950年代より、アメリカへの繊維・鉄鋼・自動車などの輸出や、ヨーロッパへのVTRなどの輸出、アメリカおよびヨーロッパへの半導体の輸出などにおいて、たびたび通商上の問題が発生してきた。
近年では、経済摩擦が、建設や金融などのサービスの分野にも広がり、欧米との間に金融摩擦が生じている。また、日米構造問題協議にみられるように、わが国経済の構造調整にまで問題が及んでいる。1993年4月からは日米包括経済協議を開始したが、協議は難航し現在も続いている。
欧米より貿易不均衡の原因として、日本における目に見えない貿易障壁、いわゆる非関税障壁が指摘されている。日米構造問題協議においては、アメリカ側より、流通制度や排他的取引慣行・企業間の系列化などの慣行が日本の構造問題としてとりあげられた。

 わが国は、経済成長と貿易の発展にともなって、国際社会に占める地位を高めてきたが、同時にその中で果たさなければならない役割も増大してきている。
世界的に保護主義が高まる中で、わが国は、現在直面する欧米との経済摩擦問題を積極的に解決して、世界の自由貿易を堅持していかなければならない。そのためには、共通の理解の下に相互不均衡の原因を究明する必要がある。
わが国としても、制度・慣行の面で貿易の障壁となっている点を取り除き、いっそうの市場開放を進める必要がある。
 また、世界最大の債務国となったわが国は、資金を必要としている国々への援助が大切である。近年の旧ソ連、東欧諸国及び中国の政治改革・経済改革は、東西貿易をいっそう拡大させ、東西双方の経済発展を進めるものと期待される。
これらの国々の経済基盤の整備など、経済を立て直すためには、西側諸国による支援が望まれ、特にわが国の経済援助が期待されている。
 わが国は、貿易、資源・エネルギーなどの面で、発展途上国との相互依存関係が強いことから、発展途上国の経済発展を支援してきた。今後も、政府開発援助(ODA)をより積極的に進めることによって、現地の人々の生活に役立つような効率的な援助をはかることが望まれる。
 さらに、資金面での援助だけでなく、発展途上国の経済社会の開発に必要な技術の普及、あるいは技術水準の向上を目的とした専門家派遣や研修員受け入れなどを通じて技術移転をおこなうことは、相互依存関係を深めるうえからも重要なことである。
わが国が、みずからの経済の課題と同時に、国際社会で果たさなければならない役割は大きい。私たちは、これらの課題にこたえていくことによって、国際社会に占めるわが国の地位と信頼を確固としたものにしていくことができるであろう。